石畳の彼方の時計塔へ
主に日記。音楽や本などのことも書いていきますv ゆっくりしていってください(*>_<*)
2006'06.13 (Tue)
石畳の彼方の時計塔へ ―8
8回目。ふたりの調査が始まります。
では続きへ。
こうした聞き込みは一見意味のないことのように思えるけれど、意外に地道な作業なりの収穫がある。当時事件を知ってどう思ったかを聞くだけでも街の態度や情報浸透度などを知ることができた。
一軒終わるたび、地図にチェックをつける。メモを整理しながら歩いていると、いつのまにか隣のラヴィルがいなかった。
見ると、少し離れたところで子供たちに話しかけている。ソメリアは少し遠くからその様子を眺めた。
ラヴィルが金貨をぴんと弾いて上に投げている。戻ってきたものを親指と人差し指でつかむ――と、子供たちから歓声があがる。言葉から察するに、金貨が銀貨になったらしい。
さらにラヴィルはその銀貨を手のひらの上で裏返すことを繰り返している。子供たちの目は釘付けだ。と、キャップをかぶった男の子があっと大きな声をだした。他の子もほぼ同時に気づいたようで、二枚になった銀貨をラヴィルから借りてみんなで眺め回している。
まだその感動も疑問も冷めやらぬうち、ラヴィルは子供たちから銀貨を返してもらっていた。二枚をあわせ、ぎゅっと指で二枚をくっつけるみたいに押さえる。それをずらして、一枚を右手に、一枚を左手にもって子供たちにかざす。子供たちには変化がわからないようで、ラヴィルはキャップの男の子に二枚を持たせた。よく見てごらん、と言っているのが聞こえる。やがて子供たちがざわつく。どうしてどうしてと勢いに任せて聞いている。ラヴィルは気障なことに「なぜでしょう」なんて言って微笑んで、それから銀貨を受け取るとソメリアのところに戻ってきた。振り向いて子供たちに手を振っている。
「最後の、何やったの?」
そう聞くと、ラヴィルは自信たっぷりな笑みで銀貨を渡してきた。よく見ると、なんと片方は両面とも表の模様で、もう片方は両面とも裏の模様である。
「なにこれ、どうしたの?」
困惑して聞くと、にっと笑って「内緒」と言ってくる。
「それよりソメリア、お昼まだ?」
時計を見るともう正午近かった。けれどソメリアはきっぱりと言う。
「まだ。あと一軒聞いたらね」
「はいはい」
ラヴィルは本当に手品さえできればいいようで、ソメリアが聞き込みをしている間は石畳を蹴ったり路地裏を覗いたりとふらふらとしていた。
一人で手品のしやすいところを探した方がいいんじゃないかと思ったけれど、ソメリアは口にしないでいた。それで情報がもらえなかったら困る。
次の家のドアをノックすると、ゆっくりと顔を覗かせたのは老人だった。いかにもやさしそうな風貌で、おっとりとした口調で用件を聞いてくる。お年寄りだからか、珍しく後ろにラヴィルがついてきていた。ソメリアは事件のことを知らないかと尋ねた。
では続きへ。
【More】
ソメリアは一軒一軒を事件のことを覚えていないか聞いてまわった。一番ほしい情報は事件を見た人のものだけれど、そんな人はめったに見つからない。今までもう二年近く調査をしてきて、そのうち目撃者に会えたのは一度だけだった。それも争いが見えたからつい違う道を通ったのでそれ以上はわからないというもので、あまり足しにはなっていない。こうした聞き込みは一見意味のないことのように思えるけれど、意外に地道な作業なりの収穫がある。当時事件を知ってどう思ったかを聞くだけでも街の態度や情報浸透度などを知ることができた。
一軒終わるたび、地図にチェックをつける。メモを整理しながら歩いていると、いつのまにか隣のラヴィルがいなかった。
見ると、少し離れたところで子供たちに話しかけている。ソメリアは少し遠くからその様子を眺めた。
ラヴィルが金貨をぴんと弾いて上に投げている。戻ってきたものを親指と人差し指でつかむ――と、子供たちから歓声があがる。言葉から察するに、金貨が銀貨になったらしい。
さらにラヴィルはその銀貨を手のひらの上で裏返すことを繰り返している。子供たちの目は釘付けだ。と、キャップをかぶった男の子があっと大きな声をだした。他の子もほぼ同時に気づいたようで、二枚になった銀貨をラヴィルから借りてみんなで眺め回している。
まだその感動も疑問も冷めやらぬうち、ラヴィルは子供たちから銀貨を返してもらっていた。二枚をあわせ、ぎゅっと指で二枚をくっつけるみたいに押さえる。それをずらして、一枚を右手に、一枚を左手にもって子供たちにかざす。子供たちには変化がわからないようで、ラヴィルはキャップの男の子に二枚を持たせた。よく見てごらん、と言っているのが聞こえる。やがて子供たちがざわつく。どうしてどうしてと勢いに任せて聞いている。ラヴィルは気障なことに「なぜでしょう」なんて言って微笑んで、それから銀貨を受け取るとソメリアのところに戻ってきた。振り向いて子供たちに手を振っている。
「最後の、何やったの?」
そう聞くと、ラヴィルは自信たっぷりな笑みで銀貨を渡してきた。よく見ると、なんと片方は両面とも表の模様で、もう片方は両面とも裏の模様である。
「なにこれ、どうしたの?」
困惑して聞くと、にっと笑って「内緒」と言ってくる。
「それよりソメリア、お昼まだ?」
時計を見るともう正午近かった。けれどソメリアはきっぱりと言う。
「まだ。あと一軒聞いたらね」
「はいはい」
ラヴィルは本当に手品さえできればいいようで、ソメリアが聞き込みをしている間は石畳を蹴ったり路地裏を覗いたりとふらふらとしていた。
一人で手品のしやすいところを探した方がいいんじゃないかと思ったけれど、ソメリアは口にしないでいた。それで情報がもらえなかったら困る。
次の家のドアをノックすると、ゆっくりと顔を覗かせたのは老人だった。いかにもやさしそうな風貌で、おっとりとした口調で用件を聞いてくる。お年寄りだからか、珍しく後ろにラヴィルがついてきていた。ソメリアは事件のことを知らないかと尋ねた。
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