石畳の彼方の時計塔へ
主に日記。音楽や本などのことも書いていきますv ゆっくりしていってください(*>_<*)
2008'09.01 (Mon)
恋のトビラ
2008'08.23 (Sat)
阪急電車
![]() | 阪急電車 (2008/01) 有川 浩 商品詳細を見る |
有川浩の単発単行本。今津線を舞台にして一駅一駅進む形での人々の物語がかかれています。
有川さんは毎度思わされますが、恥ずかしさとか常識とか悲しさとか大人さとか幼稚さとか、そういう感情を描くのがとっても上手いです。
何か大きなことを経てとかではなく、日常で少しずつ成長していく人物たちが見事に生きています。
今回のこの本ではとくに老若男女にわたって登場人物がひろくでてきて、彼らの価値観の差や性格が短いなかにすっきりと表されていて、そんな彼らが交わったりすれちがったりしていく様子が面白いです。
さわやかに読み始めてさわやかに読み終われる作品。いつもながら徒花スクモさんの表紙も素敵。
一度阪急電車に乗ってみたくなりました。
2008'08.21 (Thu)
窓の魚
![]() | 窓の魚 (2008/06) 西 加奈子 商品詳細を見る |
誰が、死んだんですか?
西加奈子の新作です。
ほんの装丁がとっても好き。きれいな表紙に惹かれます。
ミステリーのような展開の話でした。西さんの今までの作品とはちょっと違う空気でしたね。
以下、ネタばれ含みます。
まず、気になって仕方ないのが、誰が死んだのか?ということ。これは色々なことがほのめかされていますが、けっしてはっきりとかかれていない。
薬をのんでいたのはナツ。でもナツ以外が飲まないともかぎらないし、ナツはいままで飲んでいて死んでいないし、最後もすやすやと眠ったのであって死んだわけではない。
女だから残るはハルナかトウヤマの電話の相手しか選択肢がないけれど、ハルナはどうにも描写からありえないように感じる。じゃあ電話の相手なのか?でも、彼女は薬を飲んだのか?なぜそこにきて死んだのか?意味が分からないことが、多すぎる。
死体について人々が語る描写から一番しっくりくるのはナツなのに、どうも「ナツだろう」と言い切れない。個人的には、女みたいという描写がたくさんあったあたりからしても、おかしいかもしれないけど、アキオという可能性も捨てられないような気もしてしまいます。とくに最後のアキオの章を読むと。
それ以外にも、今までたくさんの人が死んだ宿、ニャアとなく見えない猫、ナツの恋人は誰なのか、そして人物たちにある欠落、たくさんの謎が、解決されずにふっと手放されて終わった作品。
なんだよこれと思った人もいるかもしれませんが、わたしはとても惹かれました。読後まで、まとわりつくような不穏な空気と謎が頭から離れない。
4人で笑い合うのに、それぞれを好きじゃないし、交わろうとしない2組のカップル。ナツとアキオと、ハルナとトウヤマ。身体のことや、身内のことなど、それぞれの悩みや人生が描かれつつ、4人それぞれの視点から同じ「旅館にとまった夜」という時間軸を追います。それぞれの章であきらかになる、表情の裏の考え。そこからじわじわと、4人が決して仲良くないこと、交わっていないことが明らかになっていく。そして翌朝発見される、だれなのかが明かされない、女の死体――。
ほわほわとした恋愛ものでも詰まっていそうな装丁の中に、漂うのはなまなましい生の声と、不穏な空気。鯉の描写などが引き立てる冷たい空気は、西さんの今までの作品からは想像できません。
西さんの暖かさや、西さんの描く途方もない幸福が、わたしも大好きなので、それを期待して読んだ人はもしかしたら不満かもしれませんが、これほど先のページを繰らせる西さんの作品は初めてでした。そして、すべてを明かさなかったところが、個人的には好き。想像が、どれも正解であるような、正解でないような気がします。
4人は、どうなったんでしょうか。それが書かれていないところに、いろんな可能性と、いろんな絶望と希望があるんじゃないかなと思います。
この本の話は、いろんな人としてみたい。そう思わされました。
お勧めです。すごく。
西さんの代表作を何か読んだ上で読むと、新鮮さに驚くと思います。
2008'08.14 (Thu)
九つの、物語
2008'07.12 (Sat)
さよならサンドイッチ
![]() | さよならサンドイッチ (ダ・ヴィンチブックス) (2007/08/22) 前川梓 商品詳細を見る |
「ようちゃんの夜」の前川さんの作品です。
個人的には前作よりもすごく好印象でした。
今回は7話からなる短編連作なんですが、あたしは一話目の「箱にしまう」にものすごく惹かれてしまいました。
とっても共感できたんですよね。大好きな人のものや、場所が、大好きな人を記憶するってことが。
「私は、持ち主を失くした物の中で、引き取り主のない涙ばかりをたくさん流した。私は、とんぼくんが行ってしまって初めて、物が記憶するということを知った。」
この2行が、懐かしさみたいな衝撃でした。
他の話も、似たようなゆるくて哀しげな雰囲気で、でも中心になってる人物が、それぞれ違う感覚と考え方をもって難しい恋愛をしてる様子が描かれていて面白かったです。
「泡と花火」の最後の主人公の気持ちを想像して切なくなるし、「ブラックベリーみたいに」にもどかしさと哀しさを感じたりもしました。
そして全体を覆う前川さんの文章の空気が、ちょっとずつ動く雲みたいな空気につつまれている感覚が、なによりこの本の醍醐味かもしれないと思います。
ちょっと疲れたときにも優しい空気に包まれる本。
ぜひ読んでみてください。
2008'07.05 (Sat)
楽園に間借り
![]() | 楽園に間借り (2007/09) 黒澤 珠々 商品詳細を見る |
第3回青春文学大賞を受賞した作品です。
面白かった。
内容もありますけど、文体がとっても素敵。3行で登場人物と友達になれる気がする作品です。テンポがよくて、どんどん先が読みたくなる。
ヒモのはなしは初めて読みましたが、同じ種類に数えられるひとでもいろんな考え方のひとがいて、主人公が感じていた嫌悪感とかだらしなさとかどうしようもなさとかゆるさとか、そういうものにすごく共感できました。堕ちるところの線引きや、ふがいなさ、責任なんか、こうして言葉にすると重みがありそうなものがテーマにあるのに、それを軽いタッチで描いています。
最後の終わり方は不思議な感覚になりましたが、うん、難しいし寂しいけど、でもさわやかさが残るというか。ひとが何を欲しているかって難しいですね、当たり前だけど。
間違いなく楽しんで読める作品だと思います。
ぜひ読んでみてください。
2008'06.22 (Sun)
ツバメ記念日 季節風*春
![]() | ツバメ記念日―季節風*春 (2008/03) 重松 清 商品詳細を見る |
あたしは、重松清は言葉の魔術師だと思います。
ありきたりなキャッチコピーだけど、でもそういう言葉をほんとに得るのって難しいと思う。この人の言葉は、すごいです。
「その日のまえに」の後に読んでもなお感動で鳥肌がたつ出来です。
以下ネタばれ含みます。
個人的に特に好きなのは、
『拝復、ポンカンにて』
この話は構成が巧すぎます。ほんとに尊敬しました。現在の話ではなく、ただの昔話ではなく、それを作家に語らせたからこそ描けた最後の描写。終わり6行に全身が震えました。
「これは息子の想像力だ。娘の想像力でもいい。この世に生きているすべてのひとは、必ず誰かの子どもだ。」
どうしてこんな言葉を生み出せるんでしょう。どうして、これだけ読めば普通の言葉が、話のなかでこんなに重みと切なさを持って存在しているんでしょう。ほんとに、重松さんはすごい人です。
それから、
『島小僧』
「僕はここで生まれた。十八まで育った。これからの人生がどうなろうと、そのことだけは永遠に変わらない。」
「トオルさん、橋、邪魔ですわ!」
地域をどうとらえるか、島を捨てるのか、そういう微妙に揺れ動く想いがリアルに書かれた作品。いろいろなものがうつろいゆくなかで、そこに確かにかわらないものがある。
「僕は〜」の行にはっとさせられました。すごくぐっときた。島とか田舎とかそういうことじゃなくても、そうだと思うんですよね。
そして、これも大好きです。
『せいくらべ』
幼い姉と弟の話。これはなんか自分自身に重ねてしまって。いろんなことに無邪気に笑う弟、気遣ってくる弟……。あたしにとっても弟はすごく大切なので、些細な言葉にもすごく共感できました。きっと弟がいる姉である人はどこかしらに共感できると思います。
「優しい子だ。わたしは弟のことが大好きだ。弟をいじめる子がいたら、ひっぱたいてやりたい――たとえ、それがわたし自身でも。」
そのほかも彩り豊かな短編がたくさん収録されています。
『めぐりびな』の気持ちはよくわかったし、『さくら地蔵』はとても素敵なお話だし、『お兄ちゃんの帰郷』はするどい描写の感情のズレが絶妙だし、『目には青葉』にはちょっとほっとさせられます。
『ツバメ記念日』の気持ちは、きっと子どもが結婚する頃におおきな共感になるんだろうなと思います。
もう“夏”も出ているようなので、早く読みたいですね。











